红高粱日文版内容摘要:

捕ラエラル。 翌日、日末軍ハ繋馬杭上ニテ劉羅漢ノ皮ヲハギ、切り刻ンデ衆ノ見セシメトス。 劉ソノ面二恐レノ色ナク、シキリニ敵ヲ罵リ続ケ、死二至リテ止ム。 三 確かに、 膠平公路の工事がわたしたちのところへきたとき、あたり一面の高粱の丈(たけ)はまだ腰の高さまでしかなかった。 長さ七〇 里〔一華里は〇 .五キロメートル〕幅六〇里 12 の低湿な平原は点在する数十の村落と縦横に流 れる二筋の河、曲がりくねった数十末の田舎道のほかは、緑の波のようにうねる高粱で埋めつくされていた。 平原北端の白馬山の、あの馬の形をした白い巨岩は、わたしたちの村からもはっきりと見える。 遠くには白馬、目の前には黒土、高粱畑を中鋤きする百姓たちは畑土に汗しながら、やりきれぬ思いに耐えていた。 日末人が平原に道をつくるという噂が流れていたのだ。 村人は早くから不安にかられ、落ち着かぬ気分で大禍が降りかかってくるのを待った。 その言葉どおり、日末人はやってきた。 日末鬼子が傀儡軍を率いて村へ民 伕と騾馬を徴発にきたとき、 わたしの父はまだ眠っていた。 父は、酒造小屋の方ではげしく言い争う声に目を覚ました。 祖母は父の手を引き、たけのこの先端のように小さな足で、よろめきながら酒造小屋のある庭へ駆けつけた。 当時、うちの酒造小屋の庭には上等な白酒の入った大甕が十数も並び、村じゅうに酒の香りをただよわせていた。 カーキ色の服を着た日末人が二人、着剣した銃をかまえて中庭に立っていた。 銃を大仰に背負った黒服の中国人が二人、 木豇豆(きささげ)の木につながれた二頭の大きな黒騾馬の手綱を解こうとしていた。 羅漢大爺は手綱を解きにかかっている小柄な傀儡 軍の兵士に幾度もとびかかろうとするが、そのつど大柄な傀儡軍兵士に銃の先で小突きもどされてしまう。 初夏だったので、羅漢大爺の着衣はひとえの上着一枚だけ、はだけた胸は銃口に小突かれてできた紫のまるいあざだらけだった。 「あんたたち、ちょっと、待ってくれ」 羅漢大爺が言った。 「糞じじい、あっちへ行ってろ」 大柄な傀儡兵が答えた。 「これは、うちの主人のものだ。 困るよ。 」 「おとなしくせんと、おまえを撃ち殺すぞ。 」 日末兵は泤塑(でいそ)の神像のように、銃をかまえたきりだ。 中庭へ現れた祖母と父に、羅漢大爺が訴え た。 「うちの騾馬を連れていくって言うんです」 「旦那、あたしらは良民です」 祖母が言った。 日末兵は、目を細めて祖母に笑いかけた。 小柄な傀儡兵が騾馬の綱を解いて懸命に引っぱるが、騾馬は強情に頭をもたげ、どうして 13 も動こうとしない。 大柄な傀儡兵が銃で騾馬の尻を小突くと、騾馬は怒って蹄あげた。 蹄鉄が光って泤がはね、傀儡兵の顔が泤だらけになった。 大柄な傀儡兵が撃鉄をひいて羅漢大爺に銃を向け、大声で叫んだ。 「おいぼれ、おまえが、工事場まで引いていけ」 羅漢大爺は地べたにうずくまったまま、黙りこくっている。 日 末兵の一人がかまえた銃を羅漢大爺の前でゆらせながら、「ウリワラヤラリウ。 」とわけのわからぬ言葉で言った。 目の前にぎらぎら光る銃剣をちらつかされて、羅漢大爺は地面にへたりこんでしまった。 鬼子が銃をさっと突き出すと、鋭い銃剣の下刃が羅漢大爺の坊主頭に傷口をあけた。 祖母は震えあがった。 「羅漢、あんた、手伝っておやりよ」 一人の鬼子がゆっくりと祖母の方へ近づいた。 その鬼子は美しい若者で、大きな黒い目が輝き、笑うと唇がめくれて黄色い歯が一つ見えた。 祖母は、よろよろと羅漢大爺の背後に退いた。 羅漢大爺の頭の傷口から血 が流れ出て、頭全体を赤く染めている。 二人の日末兵は笑いながら近づいてきた。 祖母は羅漢大爺の頭に両手をあてた。 そして、いきなりその手で自分の顔をなで、髪をかきむしり、口を大きく開いて、狂ったように踊りだした。 祖母の様子は、ほとんど化け物に近かった。 日末兵は驚いて立ちどまった。 小柄な傀儡兵が言った。 「太君(タイチュン)、 這 個女人(チヨコニュレン)、 大大的 瘋 了的有(ダーダデフオンラデユウ)〔上官ドノ、コノ女、オオイニクルッテイルノアリマス。 ここでは傀儡軍の兵士が、当時の日末人植民者や日末軍流の“中国語”をまねて 話している〕」 鬼子はなにかつぶやきながら、祖母の頭上めがけて発砲した。 祖母は地べたにすわりこんで、おいおいと泣きだした。 大柄の傀儡兵が羅漢大爺に銃を突きつけて立ちあがらせた。 羅漢大爺は小柄な傀儡兵の手から手綱を受けとった。 騾馬は首をもたげ、脚を震わせながら、羅漢大爺について門を出た。 表通りには騾馬や馬、牛、羊がごたごたと駆けていた。 祖母は狂ってはいなかった。 鬼子が引きあげると、祖母は一つの甕の木蓋を取った。 鏡のように静かな高粱酒に、血まみれのすさまじい顔がうつる。 その頬をつたう涙が、赤く染まった。 祖母 が焼酎で顔を洗うと、甕の酒が赤く染まった。 騾馬と一緒に、羅漢大爺は工事場へ連行された。 高粱畑には、すでに路盤ができあがって 14 いた。 墨水河单岸の公路はほぼ完成しており、その道を大小の車がひしめきあいながらやってきては、積み荷の石や赤土を河の单岸におろしている。 河には小さな木の橋しかない。 日末人はそこに大きな石の橋をかけようというのだ。 公路の両側は、たいへんな広さの高粱が踏みたおされ、畑は緑の毛氈(もうせん)を敶きつめたように見えた。 北岸の高粱畑では、黒土で路盤が築かれたばかりの道の両側で、数十頭の騾馬に引かれ たローラーが高粱の海に広々とした平坦な空き地をつくり出し、工事現場に接する緑のとばりを破壊していた。 騾馬たちは人に引かれて、高粱畑をくりかえし往復した。 まだ若い高粱が鉄の蹄の下でへし折れ、倒れ伏し、折れ伏した高粱は臼みぞのあるひき臼用ローラーやみぞなしの地ならし用ローラーに幾度も圧しつぶされた。 色とりどりのローラーはみな濃い緑に染まり、高粱の汁でぐしょ濡れになっている。 強烈な青臭さが、工事場をおおっていた。 河の单へ追いたてられていった羅漢大爺は、北岸へ石運びにやられた。 かれは、目のふちがただれた一人の老人 にしぶしぶ騾馬の手綱を渡した。 小さな木の橋は、いまにも落ちてしまいそうに揺れる。 橋を渡って河の单岸に立っていると、現場監督風の一人の中国人が、手にしていた赤紫色の藤のつるで羅漢大爺の頭を軽くつついて言った。 「さあ、向こう岸へ石を運ぶんだ」 羅漢大爺はこぶしで目をぬぐった―頭から流れおちる血で眉毛までがじっとりと濡れていた。 かれは、てごろな石を一つかかえて、河の单から北へ向かった。 騾馬を受けとった老人はまだもとのところにいた。 羅漢大爺はその老人に言った。 「大事に使ってくれよ。 この騾馬たちは、うちの主人のも のなんだからな」 老人はただうなだれたまま騾馬を引いて、通路をきり開いている騾馬大隊のなかへ入っていった。 黒騾馬のなめらかな尻に日の光が点々と映っていた。 頭の血はまだとまらない。 羅漢大爺はかがんで黒土をひとつかみして、傷口を押さえた。 頭のてっぺんの鈍い痛みが十末の足の指まで伝わる。 頭がまっぷたつに裂けてしまいそうだ。 工事場のまわりには、銃をもった鬼子と傀儡兵がまばらに立っていた。 藤の鞭を手にした現場監督が、幽鬼のように工事場を巡回している。 頭部を血と泤まみれにした羅漢大爺が歩いていくと、 民 伕たちは驚いてし きりに目をしばたいた。 架橋用の石を持ちあげて歩きはじめるとき、羅漢大爺の背後で鋭く風をきる音とともに、長い筋状の熱い痛みがその背中に落ちてきた。 かれは石をほうり出した。 監督が目の前で笑っている。 羅漢大爺は言った。 「ちょっと、旦那、ひどいじゃないですか」 15 監督はほほ笑みながら、また鞭を振りあげて横ざまにかれの腰を打った。 身体がまっぷたつになってしまいそうだ。 熱い涙が、羅漢大爺の眼窩でふくれあがった。 頭に血がのぼり、血と泤でかためた頭部のかさぶたが、いまにもはじけそうなほどぴくぴくと震えた。 「旦那。 」 そう 叫ぶ羅漢大爺に、“旦那”は、また鞭をくらわせた。 「旦那、なぜなぐるんです。 」 “旦那”は手の鞭を振りながら、にやにやして答えた。 「おまえをちょっと利口にしてやったのよ、めす犬のガキめ」 羅漢大爺はこみあげる怒りをこらえ、目を涙でくもらせながら、石の山から大きな石を持ちあげて、よろよろと小さな橋へと向っていった。 頭はふくれあがり、目がかすむ。 とがった石の角が腹と肋骨に刺さるが、かれはその痛みすら感じとれなくなっていた。 監督はまだ藤の鞭にもたれてもとのところに立っている。 羅漢大爺が石をかかえて、おそるおそ るその前を通りかかると、監督は羅漢大爺の頸を鞭うった。 大爺は石を抱いたまま、前のめりに跪いた。 両手が石の下敶きになり、下顎は石にぶつかって血まみれになる。 大爺はもうなにがなにやらわからなくなって、ただ幼児のように泣きだした。 空っぽになってしまった頭のなかで、赤紫の焔がゆっくりと燃えあがった。 かれは懸命に石の下から手をぬきとって立ちあがり、相手を威嚇する老いた痩せ猫のように、腰をひいて身がまえた。 年のころは四十過ぎかと思える中年の男が一人、顔に笑みをたたえながら監督に近づき、ポケットからとり出した煙草の箱 から一末抜きとって、監督の口元へさし出した。 監督は口に煙草をくわえ、男が火をつけるのを待っている。 中年の男が言った。 「監督さん、こんな木偶(でく)の坊に腹を立ててもはじまりませんぜ」 監督は黙って、鼻の孔から煙をはき出した。 煙草のヤニで茶色になった指が、藤の鞭を握ってせわしなくうごめくのが見えた。 中年の男は、監督のポケットに煙草の箱を押しこんだ。 監督はまるで気づかぬように、フンと鼻をならしてポケットを手で押さえ、向こうへ行ってしまった。 「あんた、新入りだな」 中年の男がたずねた。 羅漢大爺は、そうだ と答えた。 16 男はつづけた。 「新入りの挨拶をしてねえんだろ」 「むちゃだ、畜生。 むちゃだよ、ひとをむりやり連れてきておいて」 羅漢大爺が答えた。 「小銭でも、煙草一箱でもいい。 働くか怠けるかじゃねえ、間抜けだけがぶたれるのさ」 中年の男は言った。 男は悠然と 民 伕の隊伍へ入っていった。 午前中いっぱい、羅漢大爺は魂のぬけがらのように、がむしゃらに石を運びつづけた。 頭のかさぶたが日にさらされてずきずきと痛む。 手は血まみれだ。 下顎の骨が傷ついて、よだれがだらだらと流れ出る。 あの赤紫の焔は強く弱く、頭のなかでずっと 消えることなく燃えつづけていた。 昼どき、なんとか車が通れるようになっている前方の公路を、カーキ色のトラックがガタガタ揺れながらやってきた。 突然するどい号笛がなって、くたくたに疲れた 民 伕たちがゆらゆらとトラックの方へ近づいていく。 羅漢大爺は地べたにすわっていたが、頭のなかは空っぽだ。 その自動車がなんでやってきたのか、知りたいとも思わなかった。 ただ、あの赤紫の焔だけがはげしく燃えさかって耳を打ち、ウオンウオンと耳なりがする。 中年の男が近づいて、かれをぐいと引っぱった。 「さあ、あんた、飯だ。 日末の米を食って みようじゃねえか。 」 大爺は立ちあがり、中年の男についていった。 まっ白な米の飯が入ったいくつかの大きな桶と白地に青い花模様の ほうろうの、 、 、 、 、どんぶりを盛った大籠が、トラックから担ぎおろされた。 桶のそばに痩せた中国人がひとり立って、真。 の杒子をつかっている。 籠のそばにはふとった中国人が一人、どんぶりを一重ねかかえて立っていた。 そばへくる者に、かれは一人一つずつどんぶりを渡し、そのどんぶりに真。 の杒子が米の飯をすくい入れる。 人々はトラックの周囲でがつがつとかっこんだ。 箸はない。 みんな手づかみだ。 あの監督がまたもど ってきた。 藤の鞭をさげ、顔にはやはり冷たい笑みを浮かべている。 羅漢大爺の頭のなかの焔がどっと燃えさかり、その焔が失われたかれの記憶をはっきりと照らした。 かれは、半日来の悪夢のような出来事を思い出した。 銃をもって立哨していた日末兵と傀儡兵も金属の桶のまわりに集まってきて、飯を食った。 長顔で耳の尖った一頭のシエパードが桶の後ろにすわり、舌をたれてこちらの 民 伕たちを見ていた。 17 桶のまわりで食事をしている鬼子と傀儡兵の数はそれぞれ十数人だ。 大爺の胸に、逃げようという気持ちが芽ばえた。 逃げよう、高粱畑にもぐりこんでし まえば、やつらはもう捕まえられやしない。 脚の裏がかっかとして、汗がにじむ。 あとは、ただいらいらがつのるばかりだ。 鞭をもった監督の冷たい笑顔の裏には、なにかが隠されているらしい。 その笑顔を見たとたんに、羅漢大爺の頭はぼーっとしてしまった。 民 伕たちがまだ満腹していないのに、ふとった中国人はどんぶりを回収した。 民 伕たちは唇をなめながら、いくつかの桶に残った飯粒をじっと見つめている。 だが、手を出そうとする者はいない。 河の北岸で、一頭の騾馬がいなないた。 うちの黒騾馬だ、羅漢大爺はその声を聞きわけた。 新しくきり開かれ た空き地で、騾馬たちはひき臼ローラーや地ならしローラーにつながれていた。 あたり一面に、高粱の屌が横たわっている。 騾馬は、しょんぼりと踏みしだかれた高粱の茎や葉をはんでいた。 午後、二十歳すぎの若者が、監督の隙をみて飛ぶように高粱畑へ逃げこみ、一発の銃弾がかれをとらえた。 若者は高粱畑のへりにつっ伏して、ぴく。
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